アクセスネット本社移転プロジェクト(IT企業)

社内の交流を促しフラットな組織を作るワークププレイス


1990年に創業したアクセスネットは、ネットワーク構築・セキュリティ対策・インフラ整備などを手掛けるIT企業として成長してきました。社員の大半が若いSE(システムエンジニア)で、その多くが提携企業への出向という形で業務を行っていました。しかし会社の成長に伴って、様々な課題が見えてきました。


(課題1)社員が日常的に交流することが少なかった(SEという職能柄、内向的な社員が多いことも要因)
(課題2)組織が大きくなるにつれて、社長→管理職→エンジニアというヒエラルキーが強まりつつあった
(課題3)コロナ禍での出向の制限と在宅勤務の増加で、益々社内の交流が希薄になった(社員を知らない)


Before1(移転前の旧本社)⬇︎


旧本社は雑居ビルの中の2フロアにありました。受付・来客・事務方のフロアと、エンジニアが集まる執務・リフレッシュのフロアに分かれており、相互のコミュニケーションが取りづらい状況でした。また仕切りは簡易的な間仕切りで、音漏れや守秘性に課題がありました。


素っ気ない無人のエントランス。すぐ脇には自販機が設置されており、来客を迎える設えには程遠い。


オフィス内部はデスクや収納の規格が統一されておらず、雑然さが否めない。


SE社員が中心となる執務室は外光が入らない。休憩スペースはダンボールの家具製でくつろぐ時間は望めない。



Before2(入居前のテナント)⬇︎


移転先は駅前の31階建てオフィスビルの11階のワンフロアとなりました。
8m x 40mの細長い空間の長手一面が全面窓(西向き)でした。整然と並ぶ照明器具やエアコン、スプリンクラー等の防災設備に配慮しながら設計をする必要があります。 またオフィスはOAフロアと呼ばれる配線用の床下空間がある場合がほとんどなので、床下の配線ルートの確認もします。



Design(設計)⬇︎

横一列に繋がる窓が特徴的な空間にどのように諸室を配置するかが大きなポイント。守秘性が必要な会議室をはじめいくつかの個室と、フリーアドレスのワークスペース、社内外を問わずいろんな人が集えるセミナールームを並べていきます。


第1案:壁寄せ案 個室を壁側に寄せて窓側を全て開放するレイアウト。個室に採光が取れない・細長い空間がさらに細くなる等の課題。
第2案:窓寄せ案 個室を窓側に寄せるレイアウト。窓のない廊下のような空間が残る。
第3案:ジグザグ案 個室を壁側・窓際に分散するレイアウト。広さ明るさの異なるワークスペース空間が連続し、単調にならない変化に富んだ仕事環境が生まれる。


第3案に決定!


さらに詳細な設計を進めます。家具の配置や可動間仕切りを使ってレイアウトに自由度を高めるなどを検討を繰り返します。
(プランA)


(プランB)


(マテリアル)機能的であり質感の豊かな素材を厳選します。華美になりすぎず天然素材にこだわることで、親しみや愛着が湧きやすいようにデザインします。


(イメージ)内観パースを用いて、出来上がりの色・素材・スケールをイメージ共有します。


(プラスαの提案)会社のアイデンティティ・オリジナリィを意匠に反映させたいと考えています。同社ロゴマークの3色の青をイメージして間仕切りのカーテンやオリジナルソファの張地に活用しました。


After(新しい本社)⬇︎

エントランス:木の床・壁・建具に囲まれ自然光に引き込まれるように人を誘い込みます。


ロビー:ソファとローテーブルが並び待ち合わせやリラックスタイムを過ごす場。奥まで見通せつつ全体は見えないこのオフィスの特徴が最も感じられる場所になりました。


ペンダント照明:既存の天井照明を使いながら、アクセント照明を加えることで、この場所に合う雰囲気を作っています。


フリーアドレス1:ロビー・ラウンジに隣接して4人x2=8人掛けのシェアデスクを設置しました。フリーアドレスも1箇所に集中させるのではなく分散させて、利用者が場所を選べるようにしました。左手は小会議室が2室。


パーソナルブース:オンライン会議や個人業務用に個室を5つ設けました。防音性の高い壁・扉とし集中できる環境を提供しました。


ミーティングルーム:最大14人で使える大会議室。開放的な全面窓と目線の高さを遮るプライバシーガラス・両側のホワイトボード(書ける壁)とし明るく機能的な会議室をオフィスのほぼ中心に置きました。椅子の配色もコーポレートカラーに準じています。


バーカウンターとフリーアドレス2:不定形なハイカウンターを通路の一角に置き、気軽に話しかけたり、軽く飲食もできるコーナーを作りました。ロビーとは違ったくつろぎの空間。社内のパーティーの立食カウンターとしても活用が見込まれます。



書類ケースカウンター:腰高のスチール製書類ケースを隠す低めのカウンターで、作業スペースと管理部を仕切りました。座ると隠れ立つと見える高さによって、緩やかに全体が繋がるようになりました。他の事務機器(コピー機など)も隠すことができ、事務室然とした雰囲気が軽減しました。厚手のカーペットで事務室としての静粛性も確保しています。


管理部と社長室(左奥):扉のないガラス間仕切りで社長室を軽く囲いました。社長とスタッフのコミュニケーションを活性化させ、同社が目指すフラットな組織のあり方を空間で仕掛けました。


カーテン:3色展開のオリジナルカーテン。遮音性と遮光性をもち、社内外のセミナーに利用されます。



ソファ:2つの型のソファを3色の生地でパッチワーク状に張りました。並べ変えることで違った雰囲気や使い方が可能となります。遊び心のあるデザインを通じて、仕事の束の間が豊かな時間に変わることを期待しています。


社員の変化:新オフィスの空間に魅了され、若手社員が率先して、会社のPR動画を作り発信し始めました。

(注意)本記事は非公開となっています。内容の転載や特定の個人への連絡などはお控え頂きますようお願い致します 。

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