堀口珈琲横浜ロースタリー(コーヒー焙煎工場)
人々に開かれた食品工場の新しい形
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私たちの結論はシステム建築を見直し、新たな設計案を作ることでした。
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見学者通路から2階に上がり、建物の中央部分をスタッフや来客のための様々な居住スペースとしました。建物中央部は屋根が高く、左右に階下を見下ろす形で製造過程が一望でき、空間を無駄なく活用しています。
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部材点数も減らすことで鉄骨の上棟は2日ほどで完成しました。
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左の生豆保管庫と焙煎室は衛生的には分離し、視覚的に連続しています。
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焙煎後行う選別室。2階のミーティングルームから見下ろすことができます。
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自然光を取り込む焙煎室。北窓は直射日光が入らないため、食品の品質に影響が及ばない配慮も織り込み済みです。
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2階の廊下。天井が繋がっているため高窓からの外光が奥まで差し込みます。左の窓下には生豆保管庫が見下ろせます。
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建物正面の大窓に面する2階カッピングルーム。焙煎した豆の検品や外部の人を招いてセミナーが行われます。オリジナルテーブルは4つを集めて1つの島にすることができます。
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焙煎室に面する2階ミーティングルーム。工業用照明器具を応用したオリジナルペンダント。椅子は廃棄プラスチックとリサイクル古紙でできた新素材。同社のモノづくりに現れる環境への取り組みを踏まえて選定しています。
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>堀口珈琲横浜ロースタリー
人々に開かれた食品工場の新しい形
日本にスペシャリティコーヒーという高品質のコーヒー文化を広めてきた堀口珈琲は創業から30年を迎えようとしていました。当時都内に3店舗を構え、それぞれの店舗が焙煎を行い、街のロースタリーとして親しまれてきました。店舗ごとの焙煎は個性が出せる一方で、堀口珈琲が目指す安定した味を再現することに限界もありました。そこで焙煎機能を集約し、より大規模に展開する足がかりとして、横浜山下埠頭に焙煎工場を建てることになりました。

私たちは、システム建築でほぼ建物の設計が進む中、インテリアのアドバイザーとして参画しました。システム建築は「早・安・旨」の3拍子揃いが特徴ですが、クライアントはそれ以上の付加価値をこの工場建設で目指していました。そこで、私たちはクライアントの本当に要望を掘り起こすことから始めました。


クライアントは衛生上閉じる必要がある食品工場であっても、自信を持って見せることができる高い品質管理意識があること、機械で制御しながら焙煎するとはいえ、最後は熟練した焙煎士の経験が味を決めることから、人が働く場所として快適な居住環境が必要だという、高い目標があることがはっきりしました。

(例)食品工場のほとんどが窓のない四角い箱型建築で、サインでのみ認識できるものばかり

私たちは必要条件を整理し、どこまで実現可能か検討しました。

私たちの結論はシステム建築を見直し、新たな設計案を作ることでした。
当初のシステム建築案⬇︎
モノの動線を最優先に設計され効率化された一方で、居住スペースは屋根裏に追いやられました。また倉庫がベースとなっているため、窓はほとんどありません。広大な無用の屋根裏(断面図グレー部分)が発生するなど、無味乾燥で無駄な空間が多い箱モノ建築でした。

新しい設計案⬇︎
効率化されたモノの動線、明確な衛生区画を踏襲しながら、中央に見学通路を設けました。この通路は焙煎機が立ち並ぶ奥まで続き、各ゾーンを完全に区画する厚い間仕切りにもなります。

見学者通路から2階に上がり、建物の中央部分をスタッフや来客のための様々な居住スペースとしました。建物中央部は屋根が高く、左右に階下を見下ろす形で製造過程が一望でき、空間を無駄なく活用しています。


新しい建築案の方がローコストで実面積が増える結果になりました!

建築過程(写真)⬇︎
流通材と在来工法を用いて、システム建築以上にコストパフォーマンスの高い設計としました。

部材点数も減らすことで鉄骨の上棟は2日ほどで完成しました。

仕上げ材を厳選し、コストを抑えながらも温かみのある内装を作りました。大屋根の下にある天井は全て木の合板を張り、製造エリアとスタッフの居室が一体的に繋がるようにしました。

完成(写真)⬇︎
周辺にはない大きな切妻屋根は高速道路(首都高湾岸線)からも見え、地域のランドマークとなりました。


端正な切妻の屋根裏部分を全面窓ガラスにした特徴的な外観

3つの出入り口(左から人の出入り口・珈琲豆の入口、珈琲豆の出口)が内部の明快なゾーニングを示しています。

製造ライン以外の居室を屋根裏に設け、街に開く工場を目指しました。

1階エントランスはコーヒー豆を原材料にしたセメント板(写真右の壁)を内装仕上げとしました。


見学通路の突き当たりに焙煎機を斜めに配置します。スペースを効率的に使いつつ見せる演出を意図しました。こうして将来最大4台まで焙煎機を並べることができます。

左の生豆保管庫と焙煎室は衛生的には分離し、視覚的に連続しています。

焙煎後行う選別室。2階のミーティングルームから見下ろすことができます。

同じく2階のミーティングルームが吹き抜けの焙煎室に面しています。右側の高窓から自然光も入り込みます。

自然光を取り込む焙煎室。北窓は直射日光が入らないため、食品の品質に影響が及ばない配慮も織り込み済みです。

2階の廊下。天井が繋がっているため高窓からの外光が奥まで差し込みます。左の窓下には生豆保管庫が見下ろせます。

建物正面の大窓に面する2階カッピングルーム。焙煎した豆の検品や外部の人を招いてセミナーが行われます。オリジナルテーブルは4つを集めて1つの島にすることができます。

焙煎室に面する2階ミーティングルーム。工業用照明器具を応用したオリジナルペンダント。椅子は廃棄プラスチックとリサイクル古紙でできた新素材。同社のモノづくりに現れる環境への取り組みを踏まえて選定しています。
夜は2階の窓から光が漏れ、建物自体が交差点の街灯の役割を果たします。

横浜ロースタリー完成後、世界中の取引農家が来日しました。徹底した品質管理と大切に豆を扱い製品にする姿勢を見て、生産者の皆さんは感激されました。

様々なメディア(雑誌・新聞)でも取り上げられ、グッドデザイン賞も受賞しました。




