凸版本社ビル  エントランス  ショールーム化計画

老舗大企業の新たな試み   クローズなBtoBからオープンなBtoBへ

凸版印刷株式会社(現TOPPAN株式会社)は、創業100年以上の日本を代表するリーディングカンパニーです。「印刷技術で世界を変える」を社訓に掲げ、書籍やパッケージの印刷、ブラウン管テレビに必須のシャドウマスク等印刷技術を応用した精密部品の製造も手がけ、消費経済の中核を担ってきました。2015年に本社ビル(1968年竣工)の耐震改修工事に合わせて、エントランスホールを情報発信と交流の場を兼ねたショールームに改修することになりました。Aaatはその設計と監理を行いました。


改修前(写真)


築50年近い建物は老朽化が随所に見られ、時代錯誤の意匠や素材も相まって、より古さを感じさせていました。


冷たいタイルの床、薄暗い照明、活気のない設え、正面に構える警備員等のせいでオープンに迎え入れる雰囲気が感じられませんでした。


中2階と半地下は見えない部分が多く、案内がなければ全くわからない部屋配置となっていました。

(デザイン)Auroraの誕生

「印刷技術で世界を変える」会社の本社ショールームです。ここでは最先端の技術が紹介され、世界中の取引先から見学者が訪れます。そこで無限の色が織りなす空間体験を作り出したいと考えました。しかし無限の色彩をテクノロジーで生み出すべきではないと考えました。技術は進歩によって、必ず古く時代遅れになる日が来るからです。注目したのは光による色の発現です。2枚の偏光フィルムが重なり合う時に虹色になる現象を応用しました。吹き抜けの上部に13枚のパネルを吊るしました。パネルには偏光フィルムが貼られており、見る角度や目線の高さで多様な重なり方をします。来館者が、このパネルの中を回遊するような動線設計としました。人々は歩きながら色が出たり消えたりすることに気付き、色彩の森に迷い込んだような体験を通じて、同社の目指す世界を垣間見るというシナリオを作りました。


プランニング:細長い空間特性から、エントランス右側にロビーとミーティングのための交流ゾーンを、左側に吹き抜けを活かした回遊動線のショールームを配置しました。


空間イメージ

Aurora:パネルの重なりが織りなす色彩空間が吹き抜け上部に浮かびます。

ロビー:Auroraの浮遊感を感じさせる透明の椅子やテーブルが並びます。

ショールームB1F:商材を展示する什器をデザインしました。

ショールーム2F:音と映像によるインタラクティブな体験型展示室。デザインファームtakramとのコラボレーションによるon the fly(卓上で紙をなぞると映像情報が紙面に投影)を展示しました。

ライブラリー・アーカイブ:2階展示室の下に設けられた資料室。

ミーティングルーム:大中小・計5室の異なる会議室で商談などを行います。


(工事写真)

解体工事:間仕切り・天井を全て解体し、吹き抜け空間のための床を取り除きました。


下地・鉄骨・設備工事:大型の鉄骨階段を先行して設置し、限られたスペースを効率的に使った設備ルートを設計しています。


手すり・塗装・天井工事:天井裏が見えるルーバーや窓の自然光を拡散させるなど、空間ができるだけ広く感じられる工夫をちりばめます。

内装工事:部屋ごとに仕上げを変えて用途に適した素材を選びます。工事の品質だけでなく工程も管理します。

電気・家具・建具工事:オリジナル家具の設置や展示コンテンツの試運転に立ち会います。

家具・サイン・工事:購入家具のコーディネーションを行い世界観を大切にします。小さなサインにもオリジナリティを凝らします。


(竣工写真)




ショールーム全景


ショールーム2F全景


机上の動作と連動して映像が動くon the flyテーブル


導電インク(触ると通電する)で印刷したインタラクティブ展示パネル

透明なポリカーボネート製の打合せ用家具


ミーティングルームの内装は同社の内装建材で仕上げました。


様々なメディア(雑誌・新聞)でも取り上げられ、グッドデザイン賞も受賞しました。


(注意)本記事は非公開となっています。内容の転載や特定の個人への連絡などはお控え頂きますようお願い致します 。


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